僕の家から歩いて5分、大学がある大通りの交差点の角に、母・佳美が勤めているコンビニがある。
ブルーのタテ縞のユニフォームにデニムのジーンズ、明るくカラーしたショートの髪が可愛い童顔と相まって、もうすぐ40歳になるとは思えないくらい若々しい。
レジで客の大学生と言葉を交わす笑顔の母は、いつもの母と違って見える。
その時の佳美は、母ではなく一人の女性の顔だった。
夕方、部活が終わった帰り道、今日発売のマンガ雑誌を読もうと母のコンビニに立ち寄った。
顔を合わせるのが気まずいので他の客に続いて隠れる様に店に入ったが、ちょうど弁当の棚を整理していた母は全然気づいていない様だった。
一冊目を読み終え、二冊目に手を伸ばそうとした時、隣の二人組の大学生が母の噂話をしている事に気が付いた。
「俺さ、前からここの店員のこと、結構気に入ってんだよね」
「誰?」
「ほら、今レジをしてる30過ぎくらいの・・・」
「ああ、あの奥さん?」
「奥さん?何で分かるんだよ?」
「指輪してるじゃん。実は俺もさ、前からチェック入れてたんだ。『根本佳美』って名前だよ」
「名前まで知ってんの?」
「胸の名札見りゃわかんだろ」
「佳美さんか・・・顔も割と可愛いしさ、スタイルもいいし・・・」
「胸もなにげに大きくね?毎晩、旦那に揉まれてんのかな。ああ、俺もモミモミしてェ!パイズリされたら気持ちいいかも・・・」
信じられない二人の卑猥な会話で、もうマンガどころではなくなっていた僕は、その場から動けずにじっと聞き耳を立てていた。
「さっき弁当の棚を整理してる時にさ、屈んだ尻にパンティのラインがくっきり。もうちょっとで撫で回しちゃうとこだったよ」
「俺なんかさ、この前お釣りをもらう時に手ェ握っちゃった。『エッ』って顔して、それから恥ずかしそうに視線を外すの。きっと浮気なんてした事ねえんじゃねぇかな。処女で結婚して、オトコは旦那だけって感じ」
「あんな可愛い顔の人妻にフェラしてもらったら、あっという間に出ちゃうだろうな。くうー・・・しゃぶらせてェ!」
「嫌がる佳美を監禁してさ、真っ裸にひん剥いてハメまくるんだ・・・俺の使い込んだ巨マラでヒイヒイ言わせてやるぜ!」
「監禁って、小さい子供とか居たら可哀そうじゃん」
「そんなん居たって関係ねえよ。なぁ今度誘ってみねえか?一発ヤラせてもらおうぜ。ああいう真面目そうなタイプって、一回ハメちゃえば、もうこっちのもんよ。二人でさ、肉便器にしちゃおうぜ」
愛する大切な母が、ケダモノの様な大学生にレイプされた挙げ句、セックス奴隷にされるという衝撃的な内容の会話を聞いてしまい、どうしようもなく全身が震えて止まらない。
心臓がこれ以上ないという程バクバクして、背中に冷たい汗が流れた。
僕はマンガ雑誌を置くと逃げるように店を出て、駐車場の隅から店の中の様子を窺っていた。
大学生は雑誌のコーナーを離れると、各々飲み物を持ってレジに行き、母に何事か話し掛けている。
母は困った様な顔をして応対していたが、やがて諦めたようにジーンズのポケットからスマホを取り出して何やら操作を始めた。
「まさかすんなりメアドを教えてくれるなんて思わなかったよ」
「旦那に構ってもらえなくて欲求不満が溜まってんだろ。セックスレスってやつ?まあ、今日の夜にでも早速メールしてみるわ」
「ピチピチのギャル子もいいけど、あんな熟し切った人妻もいいよな」
「俺たちで調教してやろうぜ。反対にされちゃったりして・・・ハハハ」
いつの間にか日が落ち、暗くなった駐車場の隅にぽつんと突っ立っていた僕は、母がメアドを見ず知らずの男達に二つ返事で簡単に教えてしまった事がどうにも腹立たしくてしょうがなかった。
あの大学生が言ってたように欲求不満が溜まっていたのか?
それともコンビニの中では母親ではなく、僕の知らない一人のオンナなのか?
振り返って見ると、母は何事も無かった様にいつもの笑顔で接客していたが、僕の心臓はまだバクバクしていた。