5年前、高校の同窓会に出かけた妻が見つかったのは、
幹線道路沿いにある公園の多目的トイレの中でした。
私と妻が出会ったのは大学時代。
サークルの後輩だった妻が、出身高校も同じだったことを知り、
自宅も比較的近かったことから意気投合しました。
7年間に渡る長い交際期間を経て、私たちは結婚しました。
自分で言うのもなんですが、妻は美人です。
女優で言うと木村多江タイプかな。
すらっと背が高く、
長い手足がとてもきれいなんです。
僕ら夫婦には残念ながら子どもが出来なかったこともあり、
アラフォーとなった今も、妻は美しさを維持していました。
社交的で明るい性格の妻は、同窓会でも幹事を務めていました。
その日の同窓会では司会を務めるとのことで、
黒字のワンピースに身を包んだ妻は、
「ちょっと、遅くなるしゴメンね」
とそう言って出かけていきました。
僕らは地元の公立高校出身でしたので、
その日の妻の同窓会も、
自宅から車で15分くらいのところにある地元のホテルが会場でした。
「これから2次会で、居酒屋に移動します」
とラインがきたのが21時30分ごろ。
23時ごろにカラオケボックスに移動し、
12時30分ごろには、これから帰るとのこと。
私は迎えに行こうかとラインしましたが、
待っている方が時間かかるし、タクシーで帰るよと、
非常に真っ当な妻の意見を受け容れ、
私は妻の帰りを寝ずに待っていました。
1時30分ぐらいまでは、余裕がありました。
酔って帰るのです。
赤ら顔で、懐かしい同級生たちと、だらだら長話をする妻の姿が、
容易に想像できました。
2時を回ったあたりから、私はにわかに焦り始めました。
携帯に電話をするも、コールはすれど返事がありません。
寛大な旦那ぶって、帰宅を急かす電話をしなかったことを後悔しつつ、
なすすべも無く妻を待ちましたが、連絡さえありません。
私の不安が限界に近づいた時、警察から電話がかかってきました。
警察の知らせを受け私が病院に駆けつけると、
ベッドのうえで妻はすやすやと眠っていました。
妻の無事にホッとした私に、刑事が話したのは絶望的な話でした。
「いわゆるレイプ・ドラッグという奴ですね。」
あたかも風邪ですねという内科医のような無感情な声でそう言った刑事は、
妻は酔って寝ているのではなく、アルコールに混ぜられた薬物により、
眠らされているのだと私に告げました。
発見された時妻は、かなり酩酊した状態で、
公園の多目的トイレのユニバーサルシートに仰向けに倒れていたそうです。
それだけなら迷惑な酔っ払いですが、
妻のワンピースははぎ取られ、上半身は裸。
下半身についても、
大きく股を開かされ、左足のふくらはぎに、
脱がされかけたパンストとショーツが丸まっている状態だったそうです。
「ご主人血液型は?」
私は、その刑事の質問の意図が分かりませんでしたが、
私がB型ですと答えると、
刑事は少し気の毒そうな顔をして私に言いました。
「奥さんの膣内からO型の体液が検出されました。」
それは正に、何者かに薬を盛られた妻が、
意識がない状態でトイレに連れ込まれ、
そのまま寝取られてしまったということでした。
刑事いわく妻のような事件を「準強姦罪」というそうです。
当時は刑法の改正前でしたから、
いわゆる親告罪とされていた時代でした。
妻が気づいたら、告訴するかどうか考えてほしいとのことでした。
翌朝、目覚めた妻は、何があったかわからない状態でした。
女性刑事から事実を聞かされた妻は、私に泣いて謝りました。
カラオケボックスでトイレから戻った妻は、
急激な眠気に襲われ、帰ろうと私にラインを送った後、
気を失ってしまったそうです。
妻の身体を狙った同級生の誰かが、
妻の飲み物に薬を入れたに違いなく、
つまり最後に妻を連れ出した男こそ、
妻をレイプした男に違いない状況でした。
しかし、妻は警察の説得に応じず、
被害届を出しませんでした。
これ以上傷つきたくない。
そう言って泣く妻に、私は何も言えませんでした。
この話には、続きがあります。
実は、私たち夫婦に子どもが出来たんです。
妻に似た可愛い女の子で、今年で4歳になります。
レイプ被害にあった翌日、抱いてほしいといった妻。
妻はその時の子どもだと言います。
娘は私に似てはいませんが、
私によく懐いてくれています。
それで良い。
今はそう思っています。